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vol.04

サステナビリティ/規制対応2026.07.18約4分

なぜ、脱成長なのか

成長を前提に制度を設計してきた側と、成長そのものを疑う側の対話

マーク・カーニー × ミルトン・フリードマン × ナオミ・クライン × エイモリー・ロビンス

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『なぜ、脱成長なのか 分断・格差・気候変動を乗り越える』(ヨルゴス・カリス他、斎藤幸平監訳)は、発展の指標をGDP成長から「健康、幸福、環境」へ転換すべきだと説きます。パンデミック下の相互扶助、ローカル製造とグローバル設計の組み合わせ、身の丈に合った暮らし。この問いに、成長を止めずに気候リスクを管理する制度を設計してきた側は、どう応じるのか。今宵は成長維持・成長否定・技術的中間解という三つの立場が交差します。

今宵の賢人たち

  • カマーク・カーニー制度設計者元イングランド銀行総裁・元FSB議長。TCFD設立を主導し、気候対応と経済成長の両立を図る制度設計を担った。
  • フミルトン・フリードマン株主資本主義シカゴ学派の経済学者。1970年の論考で企業の目的を株主利益の最大化と定義し、規制懐疑・成長肯定の思想的原点となった。
  • クナオミ・クライン資本主義批判カナダのジャーナリスト・活動家。市場メカニズムに基づく気候対策の限界を批判し続けてきた。
  • ロエイモリー・ロビンスエンジニアリング実務Rocky Mountain Institute共同創業者。「ソフトエネルギーパス」「自然資本主義」を提唱し、技術・実務の側から気候リスクに対処する道筋を示した。

対談本編

司会

本日は制度側と、成長そのものを疑う論者にお集まりいただきました。カーニーさん、まず制度側の立場を。

マーク・カーニー

TCFDのような枠組みは、経済成長を止めずに気候リスクを管理する道を探るものです。企業がシナリオ分析で移行リスクを織り込み、投資を再配分すれば、成長と脱炭素は両立できる——これが私たちの前提でした。

ミルトン・フリードマン

私はもっと踏み込んで言いたい。企業の使命は利益を増やすことであり、GDPという成長の物差しを外すことは、豊かさを測る共通言語を失うことです。脱成長論が掲げる「健康・幸福・環境」は美しいが、それを誰がどう配分するかという価格メカニズムの代わりを、脱成長論は示せていない。

ナオミ・クライン

その価格メカニズムこそが問題の根です。パンデミック下で医師やエンジニアが手を組んで人工呼吸器を作った相互扶助の例は、市場の価格シグナルではなく、人と人との協働から生まれています。GDPが測っているのは取引の量であって、幸福ではない。成長を疑わずに気候対応を語ることは、燃えている家の中で家具の配置を変えているようなものです。

エイモリー・ロビンス

両者の間に、第三の道があります。私が提唱してきたのは、成長を否定するのでも肯定するのでもなく、資源効率を桁違いに高めることで環境負荷を経済活動から切り離す、デカップリングです。ローカルな製造とグローバルな設計・流通を組み合わせるという脱成長論の発想は、まさにこの方向に近い。身の丈の暮らしと技術は対立しません。

マーク・カーニー

技術と制度は補完できる。ただ脱成長論が問うているのは、私たちの成長という前提そのものですね。

司会

制度的な成長との両立、成長そのものへの懐疑、そして技術による切り離し——三つの答えが、この本の問いに異なる仕方で応じていますね。本日はありがとうございました。

対談から読み解く、4つの軸

なぜこの四人だったのか。各人がどの論点を担っているかを、人選の設計とあわせて示します。

  • マーク・カーニー:制度設計者

    「成長を維持しながら気候リスクに対応する」というグリーン成長路線の代表として起用。書籍の脱成長論に対する最も明確な対立軸。

    理論: 気候対応と経済成長の両立(グリーン成長路線)

  • ミルトン・フリードマン:株主資本主義

    「GDP成長という共通の物差しを外すことへの懐疑」を代表。書籍の主張への最も直接的な反論役として起用。

    理論: 株主資本主義。GDP成長を豊かさの共通指標とする立場

  • ナオミ・クライン:資本主義批判

    書籍の脱成長論と最も思想的に近い立場。相互扶助・GDP批判の論点に対応させる役。

    理論: 市場ベース対策批判。GDPでは測れない価値(協働・幸福)への注目

  • エイモリー・ロビンス:エンジニアリング実務

    「デカップリング」という第三の道を提示し、書籍のコスタキス(ローカル製造×グローバル設計)と技術的に呼応させる役。

    理論: デカップリング(資源効率化による環境負荷と経済活動の切り離し)、自然資本主義

問われているのは、成長という前提そのもの

制度による両立(カーニー)、成長そのものへの懐疑(クライン)、技術による切り離し(ロビンス)、そして共通言語としてのGDPの擁護(フリードマン)。四つの答えは統合されない。だがカーニーが最後に認めたように、脱成長論が問うているのは個別の政策ではなく、成長を自明とする前提の側である。

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学びの読書案内

  • マーク・カーニー

    気候対応と経済成長の両立(グリーン成長路線)

    TCFD設立主導

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  • ミルトン・フリードマン

    株主資本主義。GDP成長を豊かさの共通指標とする立場

    1970年の論考「企業の社会的責任は利益を増やすこと」

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  • ナオミ・クライン

    市場ベース対策批判。GDPでは測れない価値(協働・幸福)への注目

    『これがすべてを変える——資本主義VS.気候変動』

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  • エイモリー・ロビンス

    デカップリング(資源効率化による環境負荷と経済活動の切り離し)、自然資本主義

    Rocky Mountain Institute共同創業

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本連載は、各氏の原著・公開されている理論解説に基づき、現代の経営課題に合わせて再構成した架空の対談コンテンツです。発言はGROWTH INTELLIGENCE編集部による創作を含みます。

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