GGROWTH INTELLIGENCE経営に、次の一手を。

vol.04

なぜ、脱成長なのか

成長を前提に制度を設計してきた側と、成長そのものを疑う側の対話

マーク・カーニー × ミルトン・フリードマン × ナオミ・クライン × エイモリー・ロビンス

『なぜ、脱成長なのか 分断・格差・気候変動を乗り越える』(ヨルゴス・カリス他、斎藤幸平監訳)は、発展の指標をGDP成長から「健康、幸福、環境」へ転換すべきだと説きます。パンデミック下の相互扶助、ローカル製造とグローバル設計の組み合わせ、身の丈に合った暮らし。この問いに、成長を止めずに気候リスクを管理する制度を設計してきた側は、どう応じるのか。今宵は成長維持・成長否定・技術的中間解という三つの立場が交差します。

Cast

  • マーク・カーニー主流・制度設計者元イングランド銀行総裁・元FSB議長。TCFD設立を主導し、気候対応と経済成長の両立を図る制度設計を担った。
  • ミルトン・フリードマン補完・株主資本主義シカゴ学派の経済学者。1970年の論考で企業の目的を株主利益の最大化と定義し、規制懐疑・成長肯定の思想的原点となった。
  • ナオミ・クライン補完・資本主義批判カナダのジャーナリスト・活動家。市場メカニズムに基づく気候対策の限界を批判し続けてきた。
  • エイモリー・ロビンス補完・エンジニアリング実務Rocky Mountain Institute共同創業者。「ソフトエネルギーパス」「自然資本主義」を提唱し、技術・実務の側から気候リスクに対処する道筋を示した。

進行

本日は制度側と、成長そのものを疑う論者にお集まりいただきました。カーニーさん、まず制度側の立場を。

マーク・カーニー

TCFDのような枠組みは、経済成長を止めずに気候リスクを管理する道を探るものです。企業がシナリオ分析で移行リスクを織り込み、投資を再配分すれば、成長と脱炭素は両立できる——これが私たちの前提でした。

ミルトン・フリードマン

私はもっと踏み込んで言いたい。企業の使命は利益を増やすことであり、GDPという成長の物差しを外すことは、豊かさを測る共通言語を失うことです。脱成長論が掲げる「健康・幸福・環境」は美しいが、それを誰がどう配分するかという価格メカニズムの代わりを、脱成長論は示せていない。

ナオミ・クライン

その価格メカニズムこそが問題の根です。パンデミック下で医師やエンジニアが手を組んで人工呼吸器を作った相互扶助の例は、市場の価格シグナルではなく、人と人との協働から生まれています。GDPが測っているのは取引の量であって、幸福ではない。成長を疑わずに気候対応を語ることは、燃えている家の中で家具の配置を変えているようなものです。

エイモリー・ロビンス

両者の間に、第三の道があります。私が提唱してきたのは、成長を否定するのでも肯定するのでもなく、資源効率を桁違いに高めることで環境負荷を経済活動から切り離す、デカップリングです。ローカルな製造とグローバルな設計・流通を組み合わせるという脱成長論の発想は、まさにこの方向に近い。身の丈の暮らしと技術は対立しません。

マーク・カーニー

技術と制度は補完できる。ただ脱成長論が問うているのは、私たちの成長という前提そのものですね。

進行

制度的な成長との両立、成長そのものへの懐疑、そして技術による切り離し——三つの答えが、この本の問いに異なる仕方で応じていますね。本日はありがとうございました。

結び

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本連載は、各氏の原著・公開されている理論解説に基づき、現代の経営課題に合わせて再構成した架空の対談コンテンツです。発言はGROWTH INTELLIGENCE編集部による創作を含みます。

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