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BtoB営業を「当たりに行く仕事」から解放する—デジタルマーケティングと営業戦略

2026.08.04GROWTH INTELLIGENCE 編集部

BtoBビジネスにおいて、営業活動とマーケティングが分断されたままになっていませんか。インターネットの普及やリモートワークの広がりにより、企業の購買行動は大きく変化しています。顧客は営業担当者と接触する前にオンライン上で情報収集を行うことが一般的になり、企業にとってはデジタルチャネルを活用した顧客接点の構築が重要になっています。しかし実際には、営業部門とマーケティング部門が別々に活動しているため、見込み顧客の獲得から商談化までのプロセスが十分に連携していないケースも多く見られます。その結果、マーケティングで獲得したリードが営業成果につながらないという問題が生じます。本記事では、BtoBビジネスにおけるデジタルマーケティングの役割を整理しながら、営業活動とどのように連携させていくべきかを解説しています。マーケティングと営業を統合した戦略の重要性について説明しています。

1|結論—デジタルマーケティングに積極的なBtoB企業は収益成長率が約5倍

マッキンゼーの調査によると、デジタルマーケティング施策を積極的に進めるBtoB企業の収益成長率は、そうでない企業の約5倍です。この差は「技術の優劣」ではなく「営業の設計思想の違い」から生まれています。従来型のプッシュ型営業(企業が顧客にアプローチし続ける)から、プル型営業(顧客が自発的にアプローチしてくる状態を作る)への転換が、見込み顧客獲得効率・成約率・営業部門の業務負担の3点を同時に改善します。この転換を実現するのがデジタルマーケティングの「企業分析・情報発信・問い合わせ・ニーズ把握」という4つの役割です。

インターネットの普及とコロナ禍によるDX加速は、BtoBビジネスの営業環境を根本から変えました。企業の購買担当者は自ら検索・情報収集を行って候補を絞り込むようになっており、「まず会いに行く」という従来の営業アプローチは通用しにくくなっています。NECの新野隆社長や富士通の時田隆仁社長をはじめとする多くのデジタルの有識者が、世界デジタルサミット2020においてDXの加速化を予想しました。デジタルマーケティングへの転換はすでに「先進企業のやること」ではなく、すべての企業の経営課題になっています。

2|なぜプッシュ型営業は非効率なのか—構造的な問題の正確な把握

従来型のプッシュ型営業(アウトバウンド型)の非効率さは、「見込み度の高低を問わず全員にアプローチしなければならない」という構造的な問題に起因します。

▶ 従来型プッシュ型営業の流れ

プッシュ型営業の根本的な問題: 「企業分析→アポ取り→訪問→ニーズ把握→提案→クロージング」という全工程を営業担当者一人が担う設計になっており、見込み度の低い顧客への無駄なアプローチが構造的に発生し続けます。この構造を変えない限り、営業担当者を増員しても効率は上がりません。

3|プッシュ型とプル型の決定的な違い—「顧客が来る状態」を設計する

プル型営業(インバウンド型)はプッシュ型と根本的に異なる設計思想を持ちます。最大の違いは「顧客が自発的に企業へアプローチするようになる」という点です。
プル型への転換が「収益成長率約5倍」を生む構造的な理由: ①見込み度の高い顧客だけに営業リソースを集中することで成約率が上がる ②マーケティング部門が見込み顧客の選別を担うことで営業担当者が提案・クロージングに集中できる ③属人的な営業から組織的なマーケティング設計への転換により、再現性が生まれる この3点の複合効果が収益成長率の差を生んでいます。

4|デジタルマーケティングの4つの役割—マーケティング部門が担う業務の全体設計

プル型営業を実現するためにマーケティング部門が担うのが「企業分析→情報発信→問い合わせ→ニーズの把握」という4段階の業務です。この4段階の前半3段階(企業分析〜問い合わせ)を「リードジェネレーション」、4段階目(ニーズの把握)を「リードナーチャリング」と呼びます。

▶ 役割① 企業分析—「誰に売るか」を精緻に設定する 自社のサービスがどのようなターゲットのニーズに応えられるかを分析します。ターゲット企業リスト・導入企業リストを外部企業データと連携させ、見込み顧客の規模を把握します。自社でリストを保有していない場合は、パブリックDMPを活用して自社サイト来訪者のデータを取得し、業種・事業者情報を特定する方法もあります。市場のプレイヤーを売上・資本金等でセグメント化し、占有率・顧客単価の高いセグメントを抽出して確度の高い顧客を特定することも有効です。

▶ 役割② 情報発信—「どんな情報を・どこで・どう届けるか」を設計する 企業分析で把握したターゲットに対して、どの媒体でどのような情報を発信すれば問い合わせにつながるかを設計してコンテンツを作成します。まず自社サービスの専用サイトを立ち上げることが起点です。さらにブログ記事・ダウンロード資料を展開することで、ターゲット層にサービスへの理解を深めてもらいます。「ターゲットが抱える課題の解決策を提供するコンテンツ」という視点でのコンテンツ設計が、問い合わせにつながる確率を高めます。

▶ 役割③ 問い合わせ—「作ったコンテンツをターゲットに届ける」施策の2軸 コンテンツを作成した後、見込み顧客からの問い合わせにつなげるためには、作成したコンテンツをターゲット層に閲覧してもらう施策が必要です。主に活用されるのは「オンライン広告」と「SEO」の2軸です。

▶ 役割④ ニーズの把握—「関心の高い顧客(ホットリード)」を特定して営業に引き渡す 問い合わせをした見込み顧客に対してインサイドセールス(電話での状況ヒアリング)やMAツールを活用したメールマガジン・セミナー案内を配信することで、自社サービスへの関心と購買意欲を育てます。見込み度が一定以上になった顧客(ホットリード)を営業部門に引き渡すことが、この段階の最終ゴールです。

5|マーケティング部門と営業部門の役割分担—「誰が何をやるか」の明確化

プル型営業において最も重要な組織設計は「マーケティング部門と営業部門の役割を明確に分担すること」です。この分担が曖昧なまま導入しても、両部門の認識齟齬が生じてリードが活かされない状態になります。

役割分担の設計で最も重要な論点は「ホットリードの定義」です。「どの状態になった見込み顧客を営業に渡すか」という基準が曖昧だと、マーケティングと営業の間で「まだ早い」「遅すぎる」という認識齟齬が生じます。スコアリングの基準(メール開封・資料ダウンロード・サイト訪問頻度等)を両部門で合意した上で設定することが、プル型営業を機能させる鍵です。

6|プル型営業への転換でよくある失敗—3つの典型パターン

失敗① 「コンテンツを作ったが問い合わせが来ない」 コンテンツを作るだけでは顧客に見つけてもらえません。SEOとオンライン広告という「届ける施策」がなければ、どれだけ良いコンテンツも誰にも読まれないまま終わります。コンテンツ作成と流入施策はセットで設計することが前提条件です。

失敗② 「マーケティングと営業で別々に動いてリードが活かされない」 マーケティング部門が獲得したリードを営業部門に渡す仕組みがなければ、「問い合わせは増えたが商談につながらない」という状態に陥ります。ホットリードの定義・引き渡しのタイミング・引き渡し後の営業フローを両部門で事前に設計・合意しておくことが必須です。

失敗③ 「プッシュ型をやめてプル型だけに切り替えた」 プル型の効果が出るまでには一定の時間がかかります。コンテンツのSEO効果・MAによるナーチャリングは即効性が低く、切り替え直後に問い合わせがゼロになるリスクがあります。プッシュ型の既存施策を維持しながら、プル型の仕組みを並行して構築していく段階的な移行設計が現実的な成功パターンです。

7|プル型営業への転換ロードマップ—段階的に始めるための3ステップ

 STEP 1 ターゲットを定義して専用サイトを立ち上げる

まず「誰に・何を・なぜ伝えるか」を定義します。企業分析でターゲットセグメントを絞り込み、そのターゲットが抱える課題と自社の解決策を明確にします。この定義を起点に自社サービスの専用サイトを構築します。コーポレートサイトと兼用ではなく、特定のターゲットと課題に絞ったランディングページ設計が問い合わせ率を高めます。

▶STEP 2 コンテンツとSEO・広告を同時に設計する

ターゲットが検索するキーワードに基づいてブログ記事・ダウンロード資料を作成し、SEOとオンライン広告の両軸で届ける施策を設計します。最初はSEOの効果が出るまでの繋ぎとしてオンライン広告を活用しながら、コンテンツ資産を積み上げていく戦略が効率的です。

STEP 3 MAツールと営業の引き渡し基準を設計する

問い合わせが増えてきたら、MAツールを活用したリードナーチャリング(メールマガジン・セミナー案内)を開始します。同時にスコアリング基準を設定してホットリードを定義し、営業部門への引き渡しフローを構築します。この段階で初めて「マーケティングが育てた見込み顧客を営業が受け取る」というプル型営業の完成形に近づきます。

8|経営判断チェックリスト—プル型営業への転換を今始めるべき企業の条件

✓ 営業担当者が「当たり続ける」アウトバウンド営業に疲弊しており、成約率が改善しない ✓ 見込み度の高低を問わずすべての顧客に同じ工数をかけており、効率化の余地を感じている ✓ コーポレートサイトはあるが、サイト経由の問い合わせがほとんど来ていない ✓ マーケティング部門と営業部門の役割分担が曖昧で、情報連携ができていない ✓ 競合他社がコンテンツマーケティングやSEO施策を強化しており、差がつき始めている ✓ デジタルマーケティングに積極的な企業の収益成長率が約5倍というデータを経営判断に活かしたい

プッシュ型からプル型への転換は「営業スタイルの変更」ではなく「組織の設計思想の変革」です。マーケティング部門という機能の設計・ターゲットと課題の定義・コンテンツと流入施策の構築・ホットリードの定義と引き渡しフローという4点が整って初めて、デジタルマーケティングは「成約率5倍」という成果に近づきます。どれか一つが欠けると効果が半減するため、全体設計を経営者が主導することが不可欠です。

9|経営者への一言

プッシュ型営業は「当たり続ける」仕組みです。プル型営業は「来てもらう」仕組みです。この設計の違いが収益成長率に約5倍の差を生みます。デジタルマーケティングは「ツールを入れること」ではなく、「顧客が自発的に来る仕組みを設計すること」です。

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