
RPAを「導入して終わり」にしない— 4つのエラーパターンの回避策設計と異常系テスト(UiPath Test Suite)による長期安定稼働の実現
2026.07.09GROWTH INTELLIGENCE 編集部
1|結論—RPAの真のコストパフォーマンスは「長期間安定稼働できるか」で決まる
RPAを導入しても、ロボットが頻繁に停止して人が何度も再実行をやり直すようでは、 導入したメリットがほぼなくなります。RPAの真の価値は「メンテナンスを最小限に抑えて長期間安定稼働すること」にあります。そのために必要なのは3つのステップです。 ①自動化対象業務でのエラーパターンを事前に洗い出す ②各エラーパターンへの回避策をロボットに実装する ③正常系だけでなく異常系テストを実施してから本番稼働させる この3ステップを設計段階から組み込むことで、エラーに強い「長持ちするロボット」が実現します。UiPathをはじめとするRPAは、使用するWebサイトや業務システムの不具合・レイアウト変更・ファイルの格納ミスなど、どんなに気をつけて設計しても完全には避けられないエラーが発生します。しかし人間と違い、ロボットは最初からエラーへの対応を想定して設計していない限り、不測の事態に対応できずに停止してしまいます。
本稿では、RPA開発において特に考慮すべき4つのエラーパターンとその回避策設計、そして異常系テストの実施方法を実践的に整理します。
2|設計前の準備—業務手順書とフロー図がエラー想定の出発点
エラーパターンを洗い出す前に、自動化対象の業務をあらためて手順書やフロー図として整理することが重要です。この準備は複数の目的を持ちます。
エラー管理表の活用を推奨します。Excelを使用して「どの作業の・どのステップで・どういったエラーが発生するか」を一覧化することで、漏れのないエラーパターンの洗い出しと、回避策設計の対応関係が可視化できます。この一覧がRPA開発チームと業務担当者の共通認識を担保する設計書になります。
3|4つのエラーパターン—RPA開発で特に考慮すべき停止原因
RPA開発において頻発するエラーを4つのパターンに整理します。これらは業種・業務を問わず共通して発生しやすいエラーです。
4|4つのエラーパターンへの回避策設計—TryCatchを基本構造として実装する
エラーが発生する可能性のある操作には、TryCatchアクティビティを使用してエラー発生時にCatch側に遷移する処理がほぼ必須です。Catch側ではThrowアクティビティ・Rethrowアクティビティを使用して再実行またはエラーログの出力を行うのが一般的な実装パターンです。UnattendedRobotとAttendedRobotで回避策の設計が異なる
回避策の設計は、ロボットの起動形態によって異なります。この違いを正確に理解することが重要です。
▶ エラーパターン別の回避策
5|異常系テストの実施—正常系テストだけでは本番エラーは防げない
ロボットの実装が完了したら、動作検証では「正常系テスト」だけでなく「異常系テスト」も必ず実施することが重要です。正常系テストだけでは、エラー処理アクティビティ側に問題がある場合に本番稼働後まで気づけないからです。異常系テストの具体的な実施方法
エラーになる原因を含んだテストデータをあえて作成して実行し、エラー時に想定した動作(ポップアップの表示・エラーメッセージのログ出力・正しい中断処理等)が正しく実行されるかを確認します。
6|UiPath Test Suite—網羅的なテストを自動化する仕組み
UiPathには動作検証・テストを補助するUiPath Test Suiteという機能があります。複数のテストデータを使用してテストを実行し、結果の検証とカバレッジ(どのテストパターンをどの程度網羅したか)の確認が可能です。
テストの網羅性がカバレッジとして数値で可視化されることで、「このロボットはどの程度の品質で本番稼働しているか」というリスク管理の観点での評価が可能になります。RPA投資を決裁した経営者・管理者にとって、品質の可視化は導入効果の継続的な確認手段です。
7|RPA安定稼働で繰り返される失敗—3つの典型パターン
失敗① 「正常系テストのみ実施して本番稼働させる」 正常系テストだけでは、エラー処理ロジック側のバグが本番稼働後まで発見されません。 「エラーが発生したので確認したら、エラー処理自体がエラーになっていた」という二重のトラブルが発生することがあります。異常系テストはリリース前の品質保証として必ず実施してください。失敗② 「業務手順書なしで設計を進める」 手順書なしでRPA設計を進めると、自動化する業務の全ステップを把握しないまま開発が進みます。本番稼働後に「この状況は想定していなかった」というエラーが頻発し、 開発者への再修正依頼が繰り返されます。設計前に業務手順書・フロー図を用意するコストは、後工程の手戻りコストを大幅に下回ります。
失敗③ 「UnattendedRobotにポップアップ停止を組み込む」 UnattendedRobotは無人稼働が前提のため、エラー発生時に人の対応を待つポップアップを出すとロボットがその画面で永久に停止してしまいます。UnattendedRobotとAttendedRobotでは回避策の設計が根本的に異なることを設計段階で明確に区別しておくことが必須です。
8|経営判断チェックリスト—RPA安定稼働設計を今見直すべき組織の条件
✓ RPAを導入したが、頻繁にロボットが停止して担当者が手動でリトライを繰り返している ✓ エラーパターンを事前に洗い出さずに開発を進めており、本番稼働後に想定外のエラーが続出している ✓ 正常系テストのみ実施してリリースしており、異常系テストが行われていない ✓ Webサイトやシステムのレイアウト変更のたびにセレクターエラーが発生し、開発者への修正依頼が頻繁に発生している ✓ UnattendedRobotに人の判断を仰ぐ処理が組み込まれており、エラー時にロボットが永久停止する ✓ RPA導入後のメンテナンスコストが想定より高く、人手削減の期待した効果が出ていないRPAの価値は「長期間安定稼働してメンテナンスコストを最小化すること」で初めて最大化されます。エラーパターンの事前洗い出し・回避策の設計・異常系テストという3ステップは、ロボット設計段階から組み込むことが重要です。後から対処するほど修正コストが高くなり、RPA投資の費用対効果が低下します。「少しの工夫と労力」を設計段階に投資することが、長持ちするロボットを作る最短ルートです。