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「印鑑のためだけに出社」を終わらせる—テレワーク環境を真に機能させる3層のITインフラ整備

2026.07.28GROWTH INTELLIGENCE 編集部

テレワークを導入したいと考えていても、何から準備すべきか分からず進められていない企業は多いのではないでしょうか。テレワークは生産性向上やコスト削減、多様な働き方の実現といったメリットが期待される一方、日本企業では十分な準備が整っていないケースも少なくありません。特にコロナ禍を契機として急速にテレワーク導入が進んだことで、設備や制度が整わないまま運用を開始した企業も多く見られます。テレワークを円滑に進めるためには、PCやネットワークなどのハードウェア環境だけでなく、安全に社内システムへアクセスできるVPNなどのセキュリティ環境、さらにWeb会議ツールやビジネスチャットなどのソフトウェア環境を整えることが重要になります。本記事では、テレワーク導入にあたって必要となる基本的な環境やツールを整理し、企業が最初に準備すべきポイントを解説しています。

1|結論—テレワークの形骸化は「ツールを入れただけ」で業務フローを変えなかったことが原因

「印鑑を押すためだけに出社する」というテレワーク時代の象徴的な問題は、「紙ベースの申請・承認フロー」という業務プロセスを変えないまま、コミュニケーションツールだけをオンラインに切り替えたことに起因します。テレワーク環境を真に機能させるためには、①ハードウェア(PC+VPN)②ソフトウェア(Web会議・チャット・タスク管理)③ワークフローシステム(電子承認)という3層のITインフラを整備し、合わせて現行の業務フローを見直す「BPR(業務プロセス再設計)」が必要です。特にワークフローシステムは「入れれば終わり」ではなく、業務フローの洗い出しと承認ルートの設計というカスタマイズ作業が導入成功の鍵です。

テレワークとは「Tele(離れた)」と「Work(働く)」を合わせた造語であり、在宅勤務・モバイルワーク・サテライトオフィス勤務を主な形態として、組織全体の生産性向上・コスト削減・多様な人材確保というメリットが期待できます。しかし伝統的な日本企業の多くはテレワークに向けた仕組みを持っておらず、「何から始めればよいかわからない」という状態から導入に難航するケースが多く見られます。

2|テレワーク環境の3層構造—「通信できる」「コミュニケーションできる」「業務が完結する」

3層の中で最も見落とされやすいのが第3層(ワークフローシステム)です Web会議ツールとチャットツールを導入しても、紙ベースの申請・稟議フローが残っている限り出社が必要な業務が存在し続けます。テレワーク導入の「最後の1マイル」としてワークフローシステムの整備が不可欠です。

第1層:ハードウェア—PC管理とVPNという2つの基盤

▶ PC(端末)の管理 テレワークをするにはまず業務用PCが必要です。社内PCを持ち出す場合は請求書などを記入した適正な管理が必要です。これは常識の範囲ですが、見落とされがちなのがネットワーク環境の問題です。

▶ VPN—セキュリティと利便性を両立するネットワーク環境 自宅や外出先のオープンネットワーク(Wi-Fi等)から社内システム(人事システム・会計システム等)に接続すると、情報漏洩のリスクが生じます。特に機密情報が多い社内システムはそもそも外部からアクセスできないように設定されているケースが多いです。

VPN構築には初期設定と専門知識が必要なため、ITに不慣れな企業は専門ベンダーへの相談を推奨します。クラウド型のVPNサービスも増えており、従来の自社構築型より低コスト・短期間での導入が可能です。

第2層:ソフトウェア—3種のコミュニケーションツールの選定基準

▶ ① Web会議システム—機能と自社システムとの親和性で選ぶ Web会議システムは複数人がWeb上でリアルタイムに会議を行うためのツールです。代表的なツールはZoom・Teams・Google Meet・WebEXです。

▶ ② ビジネスチャットツール—メールより格段に効率的な情報共有手段 ビジネスチャットツールはグループチャット・社外との協業・ファイル伝送を効率よく行うためのツールです。多くのツールは音声通話・ビデオ通話の機能も内蔵しており、Web会議ツールと役割が重なる部分もあります。代表的なツールはSlack・Teams・Line Worksです。

▶ ③ タスク管理ツール—進捗の可視化とスケジュール共有 タスク管理ツールは各社員・チームメンバーのタスクとスケジュールを可視化・共有するためのツールです。代表的なものはGoogle Calendar(スケジュール管理中心)とTrello(タスク管理中心)があります。Google CalendarはGoogleMeetとの連携が高く、カレンダーに予定を入れるとMeetリンクが自動生成されます。Trelloはカンバン方式でタスクの進捗状況を視覚的に管理できますが、スケジュール管理よりもタスク進行の管理に特化しています。

第3層:ワークフローシステム—テレワークの「最後の1マイル」を解決する

ワークフローシステムはコミュニケーションツールと根本的に異なります。「入れればすぐ使える」コミュニケーションツールと違い、ワークフローシステムは「業務フローの見直しと設定」という準備作業が必要です。

▶ ワークフローシステムとは—「電子承認システム」の本質 ワークフローシステムとは一言でいうと「電子承認システム」です。電子化された申請書・通知書をあらかじめ決められた作業手順に従って集配信し、決裁処理を行います。場所に制限されずPCやスマホから稟議申請・承認が可能になり、「印鑑押すためだけに出社する」という状況がなくなります。

▶ 主要ワークフローシステムの選定ポイント 代表的なワークフローシステムとしてジョブカン(株式会社Donuts)・楽々Workflow(住友電工情報システム)・X-point Cloud(株式会社エイトレッド)などがあります。選定の際は以下の点を考慮します。

ワークフローシステム選定の確認事項は以下の5つがあります。 ①テンプレートの充実度:立替経費申請・案件計上・振込申請などのテンプレートが標準搭載されているか ②カスタマイズ性:自社の申請フォーム・承認ルートに合わせた設定が可能か ③自社システムとの連携:既存の会計・人事システムとのデータ連携が可能か ④サポート体制:ITに不慣れな企業向けの導入支援サービスがあるか ⑤操作のシンプルさ:申請者・承認者側の操作が直感的で学習コストが低いか

ワークフローシステム導入で失敗しないための最重要事項 多くのワークフローシステムには標準テンプレートがありますが、カスタマイズなしに自社業務に効率よく使うことは難しいです。導入前に「現行の業務フローを全て洗い出す」という作業が不可欠で、承認ルートの設定・申請フォームの設定・各社員の権限設定まで含めた設定作業が必要です。ITに不慣れな企業は、ワークフローシステム導入支援とBPR(業務プロセス再設計)ができる専門ベンダーへの相談を推奨します。

3|経営判断チェックリスト—テレワーク環境の整備を今見直すべき企業の条件

✓ テレワークを導入しているが「印鑑・署名のためだけに出社する」業務が残っている ✓ VPNなしで社内システムへのリモートアクセスを行っており、情報セキュリティのリスクが生じている ✓ Web会議・チャットツールを導入しているが、ツールが複数に分散しており連携・統合が不十分 ✓ 選定しているWeb会議ツール・チャットツールが自社のメインシステム(Google Workspace・Microsoft 365等)と親和性がない ✓ ワークフローシステムを導入しているが、標準テンプレートのまま使っており自社業務に最適化されていない ✓ ワークフローシステムの導入を検討しているが、現行の業務フローの洗い出しと承認ルートの設計が完了していない

テレワーク環境の整備は「ツールを導入すること」が目的ではなく、「場所に関わらず業務が完全に遂行できる状態を作ること」が目的です。ハードウェア・ソフトウェア・ワークフローシステムという3層のITインフラを整備し、合わせて現行の業務フローを見直すことが、本当の意味でのテレワーク環境の完成です。特にワークフローシステムの導入には業務プロセス再設計(BPR)の視点が不可欠であり、専門ベンダーとの連携が導入成功の確率を大きく高めます。

4|経営者への一言

「印鑑のためだけに出社する」が続いている間は、テレワーク導入は未完成です。ハードウェア・ソフトウェア・ワークフローシステムという3層の整備と、現行の業務フロー見直し(BPR)を同時に進めることが、テレワークを「緊急対応」から「恒久的な競争力」に変えます。

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