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「施策を打っても根本解決にならない」を突破する—消費者トレンド×カスタマージャーニーという2つのアプローチでビジネスモデルの「あるべき姿」を設計

2026.07.09GROWTH INTELLIGENCE 編集部

宿泊単価の競争が激化する中で、単なる『寝るための場所』という既存のモデルに限界を感じてはいませんか。旅行・ビジネス需要が回復する一方、顧客の期待は多様化し、従来の無機質なサービスだけでは選ばれ続けることが難しくなっています。現状の課題は、効率化を優先するあまり、地域の特色や滞在体験といった付加価値の創出が停滞し、顧客の情緒的な満足度を高められていない点にあります。この停滞を打破するには、市場の徹底的な分析を通じて自社の独自のポジションを特定し、デジタル活用による利便性と人間味のあるサービスの高度な融合を目指さなければなりません。宿泊の定義そのものを再考することが、次世代のホスピタリティを生みます。本稿ではビジネスホテルを具体的な事例として、他業種にも転用できる新規サービス設計の実践フレームワークを解説します。

1|結論—「施策の羅列」ではなく「あるべき姿から逆算したサービス設計」が競争優位を生む

大手ビジネスホテル3社(アパホテル・東横イン・スーパーホテル)の事例が示すように、各社が様々な施策を打っても「根本的な解決に至っていない」という現象が多くの業界で起きています。この問題の本質は「顧客が何を求めているか」の把握なしに施策を実行しているからです。あるべき姿を設計するためには、消費者トレンドとカスタマージャーニーという2つのアプローチを活用した4ステップのビジネスモデル検討フローが有効です。このフレームワークはビジネスホテルに限らず、あらゆる業界・業種の新規事業検討に転用できます。

デジタル技術の進展・グローバライゼーション・デジタルネイティブ世代の拡大により、あらゆる産業でデジタル化による差別化競争が激化しています。ビジネスホテル業界もインバウンドの増加やテレワーク普及による利用形態変化を受けて、新しいサービスモデルが求められています。

2|3社の現状分析—「施策は打っているが根本解決に至っていない」という共通構造

国内大手ビジネスホテル3社の取り組みと課題を整理すると、各社がそれぞれ独自施策を展開しながらも、根本的な差別化には至っていないという共通の構造が見えてきます。

3社に共通する問題の本質は、各社が取り組んでいる施策が「現在の顧客に対するサービス改善」または「競合が既にやっていることの模倣」に留まっていることです。「顧客が将来どんな価値を求めるか」という未来起点の視点が欠けており、施策が短期的な差別化にとどまって根本的な競争優位につながっていません。

3|ビジネスモデル検討の4ステップフロー—未来から逆算してサービスを設計する

未来のビジネスモデルを検討する上で重要なことは、ターゲット顧客が「今求めているもの」だけでなく「今後求める可能性が高いもの」を把握し、あるべき姿を明確にすることです。以下の4ステップが主流のアプローチです。

4|サービス設計をするための2つのアプローチ

アプローチ① 消費者トレンドを用いたサービス設計—2040年までの3つのトレンドから

1つ目のアプローチは「今後の消費者トレンドを基にサービス案を検討する」方法です。日経BPの「消費トレンド2040市場予測・ロードマップ」を参考に、2040年までに需要が高まると予測される3つのトレンドに注目してサービス案を検討しました。

▶ トレンド① ウェルネス—「睡眠体験」と「パーソナライズ」の2サービス案 世界的にウェルネスツアーへの注目が高まっており、「スリープツーリズム(睡眠体験を提供するホテル)」は国内でも増加傾向にあります。この流れを受けて、以下2つのサービス案を検討しました。

▶ トレンド② フーディング—「地産地消弁当サービス」 サステナビリティの普及によりフードロスへの意識が高まる中、外国人観光客やビジネスパーソンは弁当を食べる機会が多く、宿泊場所で地元の食材を使った弁当を受け取れるサービスの需要があると考えられます。地元の食材を活用することでサステナビリティへの対応とローカル体験の提供を同時に実現できます。

▶ トレンド③ マルチコミュニティ—「時間単位で買えるホテル」 テレワーク増加による多拠点生活の普及により、マンスリーホテルやデイユースへのニーズが高まっています。「日数単位」から「時間単位」への料金体系の転換により、利用者ごとに最適化された料金を実現し、ニーズの充足度をさらに高めます。テレワーカー・短時間休息ニーズ・乗り継ぎ旅行者など多様な利用形態に対応できます。

消費者トレンドアプローチの特徴 「現在の顧客」に新しいサービスを提供する際に有効な方法です。既存顧客の潜在ニーズを先取りして新たな価値を提供することで、既存顧客の満足度向上とリピート率増加につながります。また、トレンドが社会全体に普及する前に先行参入することで先行者優位が確立できます。

アプローチ② カスタマージャーニーを用いたサービス設計—Z世代という新ターゲットの行動分析

2つ目のアプローチは「新規顧客層を獲得するためにカスタマージャーニーを活用してサービスを設計する」方法です。新たなターゲット層としてトレンドの発信源とも言われるZ世代を設定し、宿泊体験の各フェーズでどのような行動をとるかを分析しました。

▶ 宿泊前のカスタマージャーニー(検索・計画・予約)—Z世代の行動特性 Z世代の宿泊施設検索はInstagramを活用することが主流であり、興味のある場所・施設をお気に入り登録・保存することが分かっています。旅行工程の計画については口コミ・レビューを参考にしながら、ある程度決められた中で自身に合った工程を自分でアレンジする傾向があります。

▶ 宿泊中のカスタマージャーニー(チェックイン・宿泊)—摩擦のない体験設計

カスタマージャーニーアプローチの特徴 「新しいターゲット層」に対してサービスを設計する際に有効な方法です。ターゲット層の行動を各フェーズに分解して分析することで、 「その顧客が何をストレスに感じているか・何を望んでいるか」が具体的に見えてきます。Z世代のInstagram活用・口コミ参照・工程の自主設計という行動特性から、サービス案が自然に導き出されました。

5|2つのアプローチの使い分け—「既存顧客向け」vs「新規顧客向け」

2つのアプローチを組み合わせることで相互補完が実現します。消費者トレンドで「市場全体が向かう方向性」を把握し、カスタマージャーニーで「特定のターゲット層がその方向性の中でどう行動するか」を深掘りする。この組み合わせにより、市場の追い風を受けながらターゲット層に刺さるサービス設計が可能になります。

6|サービス案から実行に移す際の3つの注意点

今回検討したサービス案はあくまで「初期的な案」です。実際に施策として実行するためには、以下の3点を必ず評価することが必要です。

注意点① 全てを実施することで収益向上・新規顧客開拓になるわけではない 複数のサービス案が出たとしても、自社のコンセプト・ブランドと合致するものを選ばなければ、ブランドの一貫性が失われて逆効果になることがあります。「これは本当に自社が提供すべきサービスか」という問いが選択の起点です。

注意点② 自社のケイパビリティで実現可能かを評価する どれだけ魅力的なサービス案でも、自社に実行するためのリソース・技術・パートナー網がなければ実現できません。「実現するために何が必要か・そのギャップをどう埋めるか」という実行可能性の評価が必須です。

注意点③ 費用対効果を含む具体的な新規事業戦略の検討が必須 アイデアとしては成立しても、初期投資・運用コスト・期待される収益向上効果のバランスが合わなければ実行すべきではありません。サービス案を「事業として成立するか」の観点で評価することが最後のステップです。

7|このフレームワークの汎用性—ビジネスホテル以外への転用

本稿で示した4ステップのビジネスモデル検討フローと2つのアプローチは、ビジネスホテルに限らず、あらゆる業界・業種の新規事業・新規サービス検討に転用できます。

「施策を羅列するのではなく、顧客のあるべき体験を起点にビジネスモデルを逆算する」という発想の転換が、競合と本質的に差別化された成長戦略の出発点です。業界を問わず、この思考プロセスを自社の事業開発に組み込むことが、新規事業・新規顧客開拓を成功に導くフレームワークです。

8|経営判断チェックリスト—このフレームワークを今活用すべき企業の条件

✓ 様々な施策を打っているが「根本的な解決に至っていない」と感じている ✓ 競合が実施している施策を模倣することで差別化しようとしているが効果が限定的 ✓ 新規サービスの検討を行っているが、ターゲット顧客の将来ニーズの分析が不十分 ✓ 既存顧客へのサービス改善は進んでいるが、新規顧客層の開拓に課題を感じている ✓ 「あるべき姿」を言語化するためのフレームワークなく、感覚的に新規事業を検討している ✓ インバウンドの増加・テレワーク普及・Z世代台頭などの市場変化に対応した新サービスの設計が急務

9|経営者への一言

「何の施策をするか」の前に「顧客が将来何を求めるか」を問うことが、根本的な差別化の出発点です。消費者トレンドで市場の方向性を把握し・カスタマージャーニーでターゲットの行動を深掘りする—この2つのアプローチを組み合わせた4ステップのフレームワークが、「施策の羅列」ではなく「あるべき姿から逆算したサービス設計」を可能にします。

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