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「現在の顧客」だけを見ていては市場を失う—未来の消費者行動を予測する4ステップ

2026.07.09更新 2026.08.14GROWTH INTELLIGENCE 編集部

過去の成功体験や既存のデータに基づいた分析だけでは、目まぐるしく変わる将来の消費者ニーズを捉えきれないと焦りを感じていませんか。不確実性が高まる現代において、消費者の価値観はかつてないスピードで細分化・変化しています。それにもかかわらず、多くの予測現場では、過去の延長線上での思考に陥り、新たなニーズの予兆となる微かな「シグナル」を見落としていることが戦略の遅れに繋がっています。この停滞を打破し、次の一手を確実なものにするには、統計データのみに頼らず、社会・技術・環境などの多角的な視点から未来のシナリオを描き出す予測手法を習得しなければなりません。予兆を構造的に捉える訓練こそが、変化をチャンスに変える原動力となります。本稿ではこの4ステップの実践フレームワークをホテル業界の具体事例で解説します。

1|結論—消費者行動を「現在」だけで捉える企業は、変化の速さに取り残される

デジタル技術の発達に伴い消費者の購買行動が急速に多様化・複雑化しています。「モノ消費→コト消費→イミ消費」というトレンドの変遷が示すように、顧客が何に価値を感じるかは時代とともに根本的に変わっています。コトラーが提唱した「マーケティング5.0」が示すように、2022年以降はAI・IoTなど最新テクノロジーを使って顧客体験価値を高めることが主戦場です。この変化の速い環境で成長するためには現在の顧客行動の分析だけでなく、「未来の消費者行動を予測して先手を打つ」という戦略的アプローチが必要です。

PEST分析による外部環境の変化把握・シナリオプランニングで複数の未来を描き・現在のカスタマージャーニーに照らし合わせることで、各シナリオで消費者がどう動くかを体系的に予測できます。

2|消費行動の変遷とマーケティング5.0—「何に価値を感じるか」が根本から変わった

▶ 消費行動の3段階の変遷

▶ マーケティング1.0〜5.0の変遷

マーケティング5.0が意味する経営へのインパクト テクノロジーを活用した顧客体験の個別最適化が競争の前提になることで、「同じ商品を全員に届ける」という発想が通用しなくなります。各顧客のジャーニーを理解して・先読みして・最適なタイミングで最適な価値を届けることが、5.0時代の成長戦略の核心です。

3|カスタマージャーニーとは—未来を予測するための「顧客の軌跡」

カスタマージャーニーとは、消費者が商品・サービスを購入する際に「どのような道筋をたどって購入に至るか」を時系列で可視化した手法です。顧客の認知から購入・使用後までの全プロセスを一本の旅(Journey)として描きます。

VUCAとは:Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字。現代の経営環境を表す言葉であり「将来を一点で予測することが極めて困難な時代」を意味します。だからこそ「複数のシナリオを描いて複数の未来に備える」というシナリオプランニングが、VUCA時代の経営戦略において不可欠です。

4|未来の消費者行動を予測する4ステップフレームワーク—全体概要

STEP 1 現在のカスタマージャーニーの作成—ペルソナの設計から始める

▶ ペルソナの設計 ペルソナとは、自社商品・サービスを利用する架空の人物像のことです。ペルソナを設定しないと「誰に訴求し販売するか」が明確にならず、市場から必要とされない商品・サービスを開発するリスクがあります。また、カスタマージャーニーはペルソナを基に描くため、ペルソナなしには作成できません。

▶ ペルソナを基にしたカスタマージャーニー(ホテル業界の例)

STEP 2 PEST分析による外部環境の把握—マクロ環境の変化を4視点で網羅する

PEST分析とは、企業の事業に影響を与える外部環境のうちマクロ環境を分析するフレームワークです。マクロ環境は企業がコントロールできない外部の力であり、これを見落とすと市場変化への対応が遅れます。

PESTで洗い出した要因の評価基準:「インパクト(影響の大きさ)」×「不確実性(実現の確からしさ)」 すべての要因を同等に扱うと分析が散漫になります。縦軸にインパクトの大小・横軸に不確実性の大小でマトリクスを作り、右上(インパクト大×不確実性大)に位置する要因が次のシナリオ作成の主軸になります。

STEP 3 シナリオプランニング—4つの未来を描いて対応策を先読みする

シナリオプランニングとは、不確実な未来について複数の「起こりうる世界」を想定して準備するアプローチです。一点予測ではなく複数の可能性に備えることで、どの未来が来ても対応できる強靭な戦略を作ります。PEST分析でインパクト×不確実性が高い要因から1〜2つを抽出し、それを縦軸・横軸として4つのシナリオを作成します。

▶ ホテル業界でのシナリオ作成例(「生成AI技術」×「自動運転技術」を軸に設定)

STEP 4 未来のカスタマージャーニーの作成—シナリオを顧客行動の変化に落とし込む

作成した4つのシナリオを、STEP 1で描いた現在のカスタマージャーニーに照らし合わせます。各フェーズでの顧客行動がシナリオごとにどう変化するかを具体的に描くことで、「何が変わるか」と「何が変わらないか」が見えてきます。

▶ シナリオA(生成AI普及×自動運転普及)での未来のカスタマージャーニー変化

この分析から見えてくる経営判断の示唆 シナリオAでは「施設検索→予約→チェックイン」という複数のプロセスが統合・自動化されます。これは「どこで顧客と接点を持つか」が根本から変わることを意味します。「予約時の体験」に注力してきたホテルは、AIによる旅程提案に自社が組み込まれるかという新たな競争軸に移行します。今から「AIによるレコメンド対応」の準備を始めた企業が先行者優位を確立します。

5|このフレームワークの活用方法—2方向での戦略への落とし込み

フレームワーク活用の最終的な目的 未来を「一点で当てること」ではなく、「複数の未来に備えて自社の戦略の選択肢を広げること」です。このフレームワークはホテル業界に限らずあらゆる業界・業種に転用できます。また、未来のカスタマージャーニーを描くことで社内のバリューチェーンを見直す内部変革の契機にもなります。

6|経営判断チェックリスト—未来の消費者行動予測を今実施すべき企業の条件

✓ 現在の顧客データ分析は行っているが、3〜5年後の消費者行動の変化への対応が戦略に組み込まれていない ✓ 生成AI・自動運転・メタバースなどのテクノロジーが自社の顧客の購買行動をどう変えるかを具体的に評価したことがない ✓ マーケティング4.0(ブランドエンゲージメント)の取り組みは進んでいるが、5.0(テクノロジー活用による個別最適化)への移行準備がない ✓ 「現在の競合」との差別化は行っているが「消費者行動の変化によって生まれる新たな競合」への備えがない ✓ PEST分析・シナリオプランニング・カスタマージャーニーのいずれかは実施しているが、3つを統合した未来予測を行ったことがない

現在の顧客に最高の価値を届けることは当然の前提ですが、「未来の顧客が何を求めるか」を先読みして準備している企業だけが、市場の変化を「脅威」ではなく「機会」として活用できます。4ステップのフレームワークは一度作れば終わりではなく、定期的にPEST分析を更新してシナリオを見直すことで常に「最新の未来像」に基づいた戦略を維持できます。

7|経営者への一言

「現在の顧客を満足させること」と「未来の顧客を先読みして準備すること」は別の能力です。PEST×シナリオプランニング×未来のカスタマージャーニーという4ステップが、不確実な未来を「一点予測」ではなく「複数のシナリオへの備え」に変え、どんな未来が来ても成長し続ける戦略の基盤を作ります。

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