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テクノロジー活用・DX

飲食業界に迫る「モバイルオーダー」の波—飲食店経営者が今理解すべきDXの全体像

2026.08.31GROWTH INTELLIGENCE 編集部

飲食店の現場で、注文対応や接客オペレーションの負担が増えていると感じていませんか。近年、飲食業界では人手不足に加え、感染症対策や非接触サービスへのニーズの高まりなど、店舗運営を取り巻く環境が大きく変化しています。こうした状況の中で注目されているのが、顧客自身のスマートフォンから注文を行うモバイルオーダーの仕組みです。モバイルオーダーを導入することで、注文受付の効率化やスタッフの業務負担の軽減、さらには顧客の待ち時間短縮といった効果が期待できます。一方で、店舗のオペレーション設計やシステム導入の方法によっては十分な効果を得られない可能性もあります。本稿では、モバイルオーダーの認知度と市場動向・注文の仕組みと流れ・普及が進んでいる3つの理由を整理し、飲食店経営者が「今この技術をどう位置づけるか」を判断するための基礎情報を提供します。

1|結論—モバイルオーダーは「認知度は低いが需要は高い」DXの先行機会

モバイルオーダーとは、スマートフォンのアプリやWebブラウザから事前に注文・決済を行い、店舗では商品の受け取りだけを行う仕組みです。MMD研究所の調査によると国内の認知度は約40%、利用経験者は15%程度にとどまりますが、米国では消費者の43%がモバイルオーダー利用を希望しており、日本でも今後同様の需要拡大が起きる可能性が高いと見られています。認知度がまだ低い今こそ、先行導入で差別化できる機会です。

コロナ禍により多くの飲食店が座席数の削減や営業時間短縮という苦境に立たされた中、マクドナルドが業績の下降を食い止められた要因のひとつとして、モバイルオーダーの活用が挙げられています。同社は2019年、コロナ流行以前からモバイルオーダーを導入しており、その結果として顧客の利便性向上と非接触化の両方を実現しました。

2|認知度と需要の現状—日本と米国の比較が示す「需要の先行」

MMD研究所の調査が示す日本のモバイルオーダーの現状と、米国の全米レストラン協会(NRA)×テクノミックの調査結果を比較すると、日本市場の今後の方向性が見えます。
米国での需要と供給のギャップが示す教訓: 消費者の43%が利用を希望しているにもかかわらず、導入店舗は18%しかない—この状態は「顧客が望む体験を提供できていない機会損失」が常態化していることを意味します。日本でも今後同様の流れが来ると予測される中、「認知度がまだ低い今」先行導入することで、競合との差別化と顧客体験の先取りが実現できます。

3|モバイルオーダーの仕組みと注文の流れ—来店は「受け取りだけ」になる

モバイルオーダーの本質は「これまで店頭で必要としていた時間のほとんどを、自宅など店舗以外の場所で行えるようにする」ことにあります。

▶ 注文の流れ——5ステップ

モバイルオーダー導入によって「来店時間の構造」が根本的に変わります。 従来:列に並ぶ→注文する→出来上がりを待つ→飲食する モバイルオーダー後:注文・決済は自宅で完了→来店は受け取りのみ 「列に並ぶ・注文する・出来上がりを待つ」という3つの工程が店外で完結することで、顧客の体感する待ち時間と接触頻度が同時に削減されます。

▶ アプリの開発方針—自社開発と外部サービス活用の選択 モバイルオーダーに必要なアプリは「サービス会社の提供するものを利用する」か「自社で開発する」かの2択です。中小飲食店では自社開発コストを抑えるため、第三者サービスの活用が現実的な選択肢です。支払い方法は各飲食店によって異なりますが、クレジットカード・QRコード決済などのキャッシュレス対応が標準的です。

4|モバイルオーダーが普及する3つの理由—利便性・非接触・キャッシュレス

MMD研究所のモバイルオーダー利用者アンケートでは「待ち時間を減らしたい」「列に並びたくない」という理由が上位に挙げられています。この回答から、モバイルオーダーの普及を支える3つの構造的な理由が見えてきます。

▶ 理由① 待ち時間の削減—「手持ち無沙汰な時間」を店外で使えるようになる 客が飲食店内で過ごす時間は①列に並ぶ→②注文を伝える→③出来上がりを待つ→④飲食するという4工程で構成されます。モバイルオーダーを利用すると①〜③のすべてを自宅など店外で行えるため、店内滞在時間を④の飲食だけに圧縮できます。特に③の「出来上がりを待つ時間」は顧客にとって最も手持ち無沙汰な時間です。通知が届いてから来店するモバイルオーダーの仕組みは、この手持ち無沙汰な時間を構造的に削除します。「行列のストレス」という感情的な負担の解消も、利用者満足度の高さ(85.1%が満足)に直結しています。

▶ 理由② 非接触化—コロナ対策を超えた「接触最小化」の価値 飲食店は注文・支払い・配膳という多くの対人接触が発生する場所です。ファストフードの場合、レジに並んでいる他の客との近距離接触も発生します。モバイルオーダーにより①〜③の工程が店外で完了することで、店員と客・客同士の双方の接触機会が大幅に減少します。この価値はコロナ対策としての一時的なニーズにとどまらず、「感染症リスクを下げたい」「他者との接触を最小化したい」という恒常的な顧客ニーズに応えるものです。「非接触」の価値はアフターコロナでも継続すると見られます。

▶ 理由③ キャッシュレス化の加速—決済手段の変化がモバイルオーダーの普及を後押しする MMD研究所の調査によると、モバイルオーダー利用者の大多数がクレジットカードやQRコード決済などのキャッシュレス手段を利用しており、現金利用者の倍以上を占めます。これは、モバイルオーダーの普及とキャッシュレス化の進展が相互に作用していることを示しています。

スマートフォンが一人一台普及している現在の環境は、モバイルオーダーという「スマートフォンを活用した注文手段」の普及条件を満たしています。認知度の低さという課題が解消されるにつれて、日本でも米国のような需要拡大が進む可能性は十分にあります。

5|利用が進む背景の構造—3つの理由の相互強化

3つの理由(待ち時間削減・非接触化・キャッシュレス化)は独立したものではなく、相互に強化し合う構造を持っています。
飲食店経営者にとってのモバイルオーダーの本質的な価値: 「待ち時間削減」という顧客体験の改善と「接触最小化」という安全性の向上を同時に実現しながら、 「人件費削減」という経営効率の改善にもつながるという三方向への経営インパクトがあります。この三重の価値がモバイルオーダーを「コロナ対策ツール」ではなく「恒常的なDX手段」として位置づける根拠です。

6|経営判断チェックリスト—モバイルオーダーの導入を今検討すべき飲食店の条件

✓ テイクアウト・持ち帰りを主体とする業態で、注文待ちの行列解消と回転率向上が課題 ✓ コロナ禍以降、非接触・衛生面でのサービス設計を強化する必要を感じている ✓ スマートフォン・キャッシュレス利用率が高い顧客層(若年層・訪日外国人等)が来店している ✓ スタッフの注文受付工数が大きく、人手不足・人件費削減の対策が急務になっている ✓ 競合店がモバイルオーダーを導入しており、顧客体験の差がつき始めていると感じる ✓ 自社アプリ開発は費用面で難しいが、外部サービスを活用すれば検討できる

モバイルオーダーの現在の認知度の低さは「まだ誰も使っていない」ではなく「知らないだけで使いたい人が多数いる」という状態に近いことが、米国の事例から示唆されています。日本でも認知度向上とともに需要が急拡大する可能性があります。この流れが顕在化する前に導入しておくことが、競合に対する先行者優位を確立する最短ルートです。

7|経営者への一言

モバイルオーダーは「列をなくす」ためのツールではなく、「顧客の店内滞在を受け取りだけに圧縮する」というDXの発想転換です。認知度がまだ低い今が、先行導入で差別化できる最後の機会かもしれません。

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