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広告費を下げながら売上を伸ばす— 富士通マーケティング・ログリーの成功事例が示す「ペイドからオウンドへ」の転換戦略

2026.08.21GROWTH INTELLIGENCE 編集部

BtoBビジネスにおいてデジタルマーケティングを導入したいと考えていても、具体的にどのような形で活用すればよいのか分からず、従来型の営業活動に依存してしまっていないでしょうか。近年はインターネットやクラウドサービスの普及により、企業の購買行動そのものが大きく変化し、顧客は営業担当者に接触する前から多くの情報をオンラインで収集するようになっています。このような環境の変化に対応するためには、単に広告やWebサイトを整備するだけでなく、顧客が情報収集から比較検討、意思決定に至るまでのプロセス全体を踏まえたマーケティング設計が求められます。本稿では、富士通マーケティングとログリーの2社の成功事例を分解し、「ペイドメディアからオウンドメディアへ」という転換がどのように売上拡大に直結するかを経営者の判断材料として整理します。デジタル技術を活用した営業・マーケティング改革の実践例を通じて、BtoB企業が競争力を高めるための視点を示しています。

1|結論—成功するBtoBデジタルマーケティングはペイドメディアへの依存から脱却している

BtoBデジタルマーケティングの成功事例を横断的に分析すると、共通する構造が見えます。それは「広告費(ペイドメディア)への依存を減らし、自社資産(オウンドメディア)を育てることで、低コストで見込み客を継続的に獲得できる仕組みを構築している」という点です。富士通マーケティングは年間300本の記事投資でオーガニック流入を2.5倍に拡大し、ログリーはインタラクティブコンテンツでリード獲得率を約2倍に改善しています。どちらもコストをかけて広告を買うのではなく、コンテンツという資産に投資することで売上を伸ばしています。

インターネットの普及とコロナ禍によるオンライン化の加速を背景に、BtoBマーケティングにおけるデジタル化の必要性は急速に高まっています。しかし多くの企業のデジタルマーケティングはリスティング広告やバナー広告などペイドメディアへの依存から抜け出せておらず、広告費をかけ続けなければ流入が止まるという構造を持っています。

2|BtoBデジタルマーケティングの全体像—8つの活動の中での位置づけ

BtoBマーケティングは「市場調査→セグメンテーション→リードジェネレーション→リードナーチャリング→営業連携→商談→受注→カスタマーサクセス」という8つの活動で構成されます。このうちデジタルマーケティングが最も活用されるのは「リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)」と「リードナーチャリング(見込み顧客の育成)」の2つです。多くのBtoB企業が直面している課題は「リードジェネレーションをペイドメディア(広告)に依存しているため、広告費をかけ続けなければならない」という構造です。この構造を「オウンドメディア(自社コンテンツ)からの流入」に転換することが、2つの事例が示す共通の成功パターンです。

3|富士通マーケティング—データ一元管理×コンテンツ拡充で広告費を80%以上削減

▶ 課題の構造 マーケティング支援会社シャノンの「国内BtoBマーケティングの現状と課題レポート2017」によると、担当者が抱える課題のトップは「コンテンツの企画制作が難しい」でした。富士通マーケティングも同様の課題に悩んでいました。加えて、デジタルマーケティングで重視される「One to Oneマーケティング(個別に最適化したコミュニケーション)」を実現するために、見込み客データの適切な管理と最新化が求められていました。

▶ 施策の内容—3段階の構造変革 富士通マーケティングは2011年にデジタルマーケティングの専門組織を立ち上げ、段階的に施策を進めました。

富士通マーケティングが達成した状態: 年間300万PVのうち8割以上がオーガニック検索とメール経由。これはリスティング広告への依存からほぼ脱却し、「コンテンツという資産が継続的に見込み客を連れてくる仕組み」が完成した状態です。広告費をかけ続けなくても流入が止まらない—これがオウンドメディア戦略の経営的価値です。

4|ログリー—インタラクティブコンテンツでリード獲得率を約2倍に改善

▶ 課題の構造 ログリーはネイティブ広告サービス「LOGLY lift」を提供していましたが、市場の伸びにふさわしいマーケティング活動が行われていない状況でした。コロナウイルスの感染拡大により展示会などオフラインでのリード獲得手段が減少し、オンラインでの新規リード獲得が急務となりました。

▶ 施策の内容—インタラクティブコンテンツ「OPTIO」の導入 ログリーはクロストレックス社が開発したインタラクティブコンテンツ配信ツール「OPTIO」を導入しました。インタラクティブコンテンツとは、EBOOKやクイズ・診断など、ユーザーのアクションに応じて情報を提供する「双方向」コミュニケーション型のWebコンテンツです。従来の一方向的な情報提供と異なり、閲覧者の行動に対して企業が適切な情報を動的に提供します。

▶ OPTIOの実装設計—2ページ完結とターゲット別資料の明確化 ログリーのEBOOKは2ページ程度で概要がわかるよう簡潔に設計されており、相手がトピックスや資料の概要をすぐ把握できるよう工夫されています。全画面表示のコンテンツを各ページ1日1回配信する設定で、問い合わせフォームからの導線を「最新情報」「メディアガイド」「媒体社向け」などにターゲット別に分類することで、誰に向けたどんな資料かを明確にする設計を進めています。

▶ 成果—リード獲得率が約2倍に改善 OPTIOの導入によって、リード獲得率が以下のように改善しました。

ログリーの事例が示す示唆: 「コンテンツの中身だけでなく、届け方の設計を変えることで成果が変わる」です。同じ情報でも、一方向か双方向か・ページ遷移があるかないか・フォームまでの導線が長いか短いか—この設計の差が約2倍のリード獲得差を生み出しています。コンテンツへの追加投資なしに「届け方」を変えるだけで成果が改善できる可能性があります。

5|2事例の横断分析—成功するBtoBデジタルマーケティングの共通構造

富士通マーケティングとログリーの2事例を横断的に見ると、成功するBtoBデジタルマーケティングに共通する2つの構造が浮かび上がります。
2事例から導かれる経営的な結論: BtoBデジタルマーケティングの成功は「広告費の総量」ではなく「コンテンツという資産への投資」と「見込み客の行動を把握する仕組み」の掛け合わせで決まります。ペイドメディアへの依存を減らしながらオウンドメディアを育てることが、売上拡大とマーケティングコスト削減を同時に実現する唯一の構造改革です。

6|BtoBデジタルマーケティングでよくある失敗—3つのパターン

失敗① 「広告費をかければリードが取れる」という広告依存からの脱却ができない 広告費をかけている間はリードが取れても、広告をやめた瞬間に流入がゼロになります。富士通マーケティングが示すように、オーガニック流入の構築には時間がかかりますが、一度作った資産は広告費なしでリードを生み続けます。短期的な広告成果に満足せず、オウンドメディアへの段階的な転換を設計することが重要です。

失敗② 「コンテンツを作ったがリードにつながらない」 コンテンツの質だけでなく、届け方の設計が成果を左右します。ログリーの事例が示すように、ページ遷移の有無・フォームまでの導線の短さ・閲覧者属性に応じた動的な表示—これらの設計差が約2倍のリード獲得差を生みます。コンテンツを「作って終わり」ではなく、「届け方の最適化」まで設計することが必要です。

失敗③ 「データが散在していてOne to Oneマーケティングができない」 営業・展示会・セミナー・Webなど複数チャネルのデータが個別管理されたままでは、見込み客の全体像が把握できずパーソナライズ施策が実行できません。富士通マーケティングが最初に取り組んだのがこのデータの一元管理です。マーケティング施策の効果を最大化する前提として、データ基盤の整備が必要です。

7|自社で実践するための3ステップ—2事例の構造を転用する

STEP 1 見込み客データを一元管理する基盤を整える(富士通マーケティングの第1フェーズ)

まず、営業・展示会・セミナー・Webサイトなど複数チャネルで分散している見込み客データを一か所に集約します。最初から完璧なシステム統合を目指す必要はなく、富士通マーケティングも「現在も外部の複数サービスをつなげて運用している」と述べています。まずデータを一元管理できる状態を作ることが出発点です。

STEP 2 ペイドメディアから徐々にオウンドメディアに転換する(富士通マーケティングの第2フェーズ)

広告費の一部をコンテンツ制作費に振り替え、SEOを意識した有益な記事・事例・ノウハウコンテンツを継続的に制作します。年間300本という量は中小企業には過剰ですが、月4〜8本程度のペースでも、1〜2年継続することでオーガニック流入の蓄積が始まります。コンテンツは「作った瞬間から資産として機能し続ける」点で広告費との本質的な違いがあります。

STEP 3 コンテンツの届け方を最適化する(ログリーの施策)

コンテンツが蓄積されてきたら、届け方の設計を見直します。フォームまでの導線を短くする・ターゲット別に資料を分類する・インタラクティブな表示で離脱を防ぐといった改善は、追加コンテンツ投資なしに実施できます。ログリーが示したように、届け方の設計変更だけでリード獲得率を約2倍に改善できる余地があります。

8|経営判断チェックリスト—BtoBデジタルマーケティングの転換を今始めるべき企業の条件

✓ リスティング広告・展示会など広告費・イベント費に多くを割いているが、成果が安定していない ✓ 広告をやめた瞬間にリードがゼロになるという構造的な依存状態にある ✓ 自社サイトへのオーガニック流入が少なく、検索エンジンからの新規訪問がほぼない ✓ 営業・マーケティング・イベントのデータが個別管理されており、見込み客の全体像が見えない ✓ コンテンツは作っているが問い合わせにつながらない・フォームへの誘導が弱い ✓ BtoBマーケティングのデジタル化を進めたいが、何から手をつけてよいかわからない

2事例が示す共通の結論は「ペイドメディアへの依存からの脱却」です。広告費を削るのではなく、コンテンツという資産への投資にシフトすることで、長期的に低コストで見込み客を継続獲得できる仕組みが構築されます。この転換は一夜にして実現するものではありませんが、始めた企業と始めない企業の差は時間とともに広がり続けます。

9|経営者への一言

広告費をかけ続けることがBtoBマーケティングだと思っている経営者は、毎月「リードを買い続ける」コスト構造から抜け出せません。コンテンツは広告と違って、作った翌月も・翌年も・5年後もリードを連れてきます。オウンドメディアへの投資は、広告費を減らしながら売上を伸ばせる唯一の構造改革です。

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