IT未経験者でも使えるRPAはどれか—後発RPAツール「ロボオペレータ」「Coopel」実機レビューと経営者向け選定判断ガイド
2026.08.31GROWTH INTELLIGENCE 編集部
1|結論—後発RPAツールは「現場主導DX」の最も現実的な入口である
大手RPAツール(UiPath・WinActorなど)は機能が豊富な反面、導入コストと学習コストが高く、IT専任担当者なしには運用が難しいという課題があります。後発の「ロボオペレータ」と「Coopel」は「使いやすさ」を最優先に設計された低コストツールです。ロボオペレータはデスクトップ・Web両方の自動化に対応しつつ月額費用を抑え、CoopelはPCインストール不要のクラウド完結型でWeb業務の自動化に特化しています。「どちらを選ぶか」は自社の対象業務と予算で決まります。RPA導入における最大の障壁は「コスト」と「使いこなせないリスク」の2つです。後発ツールはこの2点を解決するために設計されており、「IT部門がない中小企業」「まず試してみたい段階の企業」に向く特性を持ちます。
2|後発RPAツールが登場した背景—大手ツールの「限界」と「需要の空白」
UiPathやWinActorなどの大手RPAツールは、プロセス管理・スケジュール実行・権限管理などの高度な機能を持つ一方で、導入・運用に一定の技術知識を要します。サーバー型の場合は初期コストも大きく、中小企業が「業務の一部だけ自動化したい」というニーズには過剰な側面があります。後発RPAツールが狙う市場は「プログラミング経験ゼロでも使えること」と「月額数万円以下で試せること」の2点を同時に満たす領域です。大手ツールが「IT部門主導の本格展開」向けだとすれば、後発ツールは「現場担当者が自分でロボットを作れる環境」を目指したものです。この発想がDXの裾野を広げる可能性を持ちます。本稿で紹介する「ロボオペレータ」(株式会社アシリレラ開発、バージョン1.4.1.4で検証)と「Coopel」(DeNA開発)は、いずれも操作性・学習コストの低さを競合との差別化軸に置いた後発ツールです。前回レビューした「アシロボ」との比較も交えながら、各ツールの特性と選定基準を整理します。
3|ロボオペレータ—「使いやすさ」と「画像認識精度」を両立した純国産RPA
ロボオペレータは純国産RPAツールとして、IT知識のない現場スタッフでも簡単操作できるよう設計されています。前回レビューした「アシロボ」と設計理念は類似しますが、完成度と機能面で上回るという評価結果でした。 ▶ UIの設計思想—専門用語ゼロのカード式インターフェース メインUIはアクションをカード式で並べた設計です。「マウス」「キーボード」など人間の操作に近い言葉で分類されており、専門用語による拒否反応が生じにくい設計です。アシロボとデザインは異なりますが、ユーザー体験の思想は近いものです。▶ 画像認識の精度—アシロボとの比較で明確な優位
デスクトップアプリの操作は「画像認識」方式(オブジェクト認識は不可)で行います。アシロボは画像認識の際に色合い・範囲指定などを細かく調整しないと動作しないケースがありましたが、ロボオペレータは同じ動作を設定して特に調整なしで正常稼働し、50回繰り返しテストでも問題がありませんでした。
解像度変更後も正常実行できた点は特筆すべき改善です。画像認識技術の向上が反映されており、従来は回避できなかった環境変化への耐性が高まっています。一方、色合い変更や類似画像の混在、テキスト読み取りは画像認識方式の構造的な限界として残ります。
▶ Web操作—アシロボより大幅に簡単な4ステップ操作 Web操作では「オブジェクト認識」が可能です。アシロボはWeb操作時に専用ブラウザから「Xpath」のコピーが必要で手間がかかりましたが、ロボオペレータは4ステップの操作でサイトの指定箇所への文字入力が実現でき、専用ブラウザ起動やXpathのコピーは一切不要でした。この差は実際の開発工数に大きく影響します。
ロボオペレータの総評: 「アシロボと設計理念は類似するが、完成度がより高い」というのが実機評価の結論です。Web操作の手間が大幅に削減されており、現場担当者が自力でロボットを開発する環境としてアシロボよりも実用的です。費用はアシロボの倍以上ですが、専用管理ツール「ロボマネージャー」も備えており、一定規模の組織的運用にも対応します。
4|Coopel—PCインストール不要・クラウド完結型RPAの実力
CoopelはDeNAが開発した完全クラウド方式のRPAツールです。これまでのRPAツールはサーバー型・クライアント型いずれも一度PCにインストールしてから使用する必要がありましたが、CoopelはGoogleカレンダーと同様にブラウザからアクセスしてログインするだけで使用開始できます。▶ 完全クラウド方式の3つの特徴
Coopelの設計を理解する上で核心となる3点を整理します。
▶ ツール内チュートリアルの設計—操作アクションにマウスを置くだけで動画付き説明 チュートリアルの設計が他ツールと根本的に異なります。多くのツールは専用サイトや別ファイルとしてチュートリアルを用意しますが、Coopelは操作したいアクションにマウスを置くと動画付きのポップアップ説明が表示されます。使いながら学べるこの設計は、IT知識のない現場スタッフが単独で習得できる環境として評価できます。
Coopelの総評: 「Web操作とクラウドサービス連携に特化したツール」というのが実機評価の結論です。PCインストール不要・月額5,400円(1ライセンス)という低コスト・学習コストの低さが強みです。一方で、ローカルにインストールされたアプリ(会計ソフト・ERP等)の操作は実質的に不可能であり、業務の対象が「Web業務のみ」かどうかが導入判断の決定的な条件になります。
5|3ツール横断比較—アシロボ・ロボオペレータ・Coopelの選定マトリクス
前回レビューのアシロボを加えた3ツールを横断的に比較します。「どれが最良か」ではなく「自社の課題・業務・予算・体制」に最も合うツールはどれかという視点で読んでください。
6|自社に合うツールの選び方—3つの判断軸
▶ 判断軸① 自動化したい業務は「デスクトップ系」か「Web・クラウド系」か 最も重要な判断軸です。Coopelは完全クラウド方式のため、ローカルにインストールされたアプリ(会計ソフト・ERP・社内システム等)の操作は実質的に不可能です。「Webブラウザ上の操作」と「クラウドサービス連携」だけを自動化したいのであればCoopelが最適です。デスクトップアプリの操作も含む場合は、ロボオペレータまたはアシロボを選ぶ必要があります。▶ 判断軸② コスト重視か機能・精度重視か アシロボ(月5万円・2ライセンス)とCoopel(月5,400円・1ライセンス)はコスト重視の選択肢です。ロボオペレータはアシロボの倍以上の月額費用ですが、Web操作の簡便性・画像認識精度・管理ツールの面でアシロボを上回ります。「まずスモールスタートで試したい」ならCoopelまたはアシロボ、「一定の品質と管理機能を確保したい」ならロボオペレータという棲み分けです。
▶ 判断軸③ 現場担当者だけで運用できる体制か
3ツールともIT知識のない現場担当者を対象に設計されていますが、Coopelのツール内チュートリアル設計は特に自走しやすい設計です。ロボオペレータも操作はシンプルですが、管理ツール(ロボマネージャー)を活用する場合は一定の理解が必要です。IT部門のサポートなしに現場主導で運用する体制であれば、Coopelまたはアシロボのシンプルさがより機能します。
7|RPAツール選定でよくある失敗—後発ツール導入の3つの落とし穴
失敗① 「安さだけ」でCoopelを選び、ローカルアプリ操作ができずに使えなかった Coopelは完全クラウド方式のため、ローカルにインストールされた会計ソフトやERP等の操作は不可能です。「安い」という理由だけで導入を決めると、主要な自動化対象業務をカバーできないという 致命的なミスマッチが発覚します。導入前に「対象業務がWeb系かローカル系か」の確認が必須です。失敗② 「現場スタッフに任せればすぐ使える」と期待して業務プロセス分解を省略する 後発ツールはUIがシンプルでも、「どの業務を自動化するか」の業務プロセス分解は必須です。対象業務が整理されていないままロボットを作ると、例外処理への対応が取れず、ロボットが頻繁に止まる状態になります。ツールの使いやすさと、業務設計の精度は別の問題です。
失敗③ 「画像認識でなんでも自動化できる」と思い込む ロボオペレータ・アシロボが採用する「画像認識」方式は、色合い変更・類似画像の混在・テキスト読み取りには対応できません。これは画像認識方式の構造的な限界であり、ツールの問題ではありません。対象業務に画像認識の限界を超える操作が含まれる場合は、オブジェクト認識対応の大手ツールへの移行を前提に設計する必要があります。
8|経営判断チェックリスト—後発RPAツールの導入を今検討すべき企業の条件
✓ 毎日繰り返しているWeb上のデータ入力・コピー&ペースト業務があり、担当者の工数を削減したい ✓ 大手RPAツールのコスト・学習コストが高く導入を断念した経緯がある ✓ IT専任担当者がおらず、現場スタッフが自力でロボットを作れる環境を求めている ✓ Google Spreadsheet・Slack・OneDriveなどのクラウドサービス間でのデータ連携を自動化したい ✓ まず月数万円以下で試験的にRPAを導入し、効果を確認してから拡大を検討したい ✓ DXの最初の一手として、現場レベルの業務自動化から着手したい後発RPAツールは「スモールスタート・低コスト・現場主導」というRPA導入の新しいパターンを可能にしています。大手ツールでは実現が難しかった「担当者が自分でロボットを作って試す」文化を組織に根付かせることが、DX推進の真の入口になります。ただし、ツールがシンプルであることと、導入で成果が出ることは別です。対象業務の選定と業務プロセスの設計精度が、後発ツール活用の成否を決める唯一の要因です。